許可・労務・契約の確認から、実行条件の整理まで
DDは買収前の調査です。人材派遣会社では財務・税務とともに、許可、契約、管理台帳、待遇決定方式、給与支払の実態を照合し、実行前に解決する事項と引継ぎ後の対応を分けます。
調査の入口となる3つの領域
許可・事業所
労働者派遣事業許可、有料職業紹介許可、許可更新時期、事業所単位の管理体制、派遣元責任者の配置を確認します。
待遇決定方式
派遣先均等・均衡方式か労使協定方式か、労使協定の有効期間、賃金テーブル、退職金相当、通勤手当の扱いを確認します。
管理帳票
派遣元管理台帳、派遣先通知、就業条件明示書、個別契約、教育訓練記録、苦情処理記録を突合します。
買い手候補に出す前に整える資料
| 契約 | 派遣基本契約、個別契約、派遣料金、請求条件、契約更新時期、派遣先責任者との連絡体制。 |
|---|---|
| スタッフ | 稼働人数、登録者数、職種別構成、雇用契約、有給残、社会保険、離職率、欠勤率。 |
| 法令・労務 | 36協定、労使協定方式、キャリアアップ教育訓練、安全衛生、抵触日管理、マージン率等の情報提供。 |
| 経営KPI | 売上総利益率、派遣料金単価、平均賃金、稼働率、取引先集中、採用単価、スタッフ獲得経路。 |
8領域の調査結果を、対応事項につなげる
以下は調査設計の例です。事業区分、規模、取引方法に応じて追加・調整します。全項目を満たせば法令遵守や買収成功を保証できるものではありません。
| 許可・事業所 | 許可証、変更届、更新期限、事業所・責任者一覧を照合します。取引方法と譲受側の許可の有無に応じ、手続きと営業開始可能日を管轄労働局に確認します。 |
|---|---|
| 派遣先契約 | 基本・個別契約と請求・就業条件を突き合わせます。譲渡制限、通知・承諾、解約条項に対応が必要な場合は、相手先・担当者・期限を記録します。 |
| 待遇決定・賃金 | 採用する方式と対象者、協定・規程、賃金台帳、勤怠を照合します。未払賃金や適用誤りの疑いは、対象期間・人数・金額の調査と是正を検討します。 |
| 期間・管理台帳 | 契約、就業条件、派遣元管理台帳と、該当する期間制限の管理記録を確認します。M&Aや派遣元の変更だけで期間が自動的にリセットされると扱わず、例外の適否も確認します。 |
| 報告・教育訓練 | 事業報告、収支決算、マージン率等の情報提供、教育訓練の計画・記録を確認します。未提出・未実施・記録不足は、是正方法と担当者を決めます。 |
| 収益・運転資金 | 月次売上・粗利・稼働人数と請求・入金・給与データを照合します。一時的な利益、滞留債権、給与先払いの資金負担を分けて、価格や必要資金の検討へ反映します。 |
| 個人情報・システム | 登録者DB、勤怠・給与・請求システムの利用目的、権限、委託契約を確認します。開示・移行に必要な情報を限定し、交渉不成立時の返却・削除を決めます。 |
| 引継ぎ体制 | 営業・管理担当の継続、派遣先への説明、スタッフの雇用条件を確認します。事業譲渡で労働契約を移す場合は、説明・協議と個別承諾の手続きを計画します。 |
発見事項は「実行前・契約条件・実行後」に分ける
- 実行前:営業に必要な許可、必要な承諾・契約手続き、重大な未解決事項の対応を確認します。確認できるまで実行日を決め切らない事項を整理します。
- 契約条件:発見した負担や不確実性について、価格、表明保証・補償、実行条件、引継ぎ協力の扱いを専門家と検討します。
- 実行後:給与・請求の移行、担当者教育、権限変更などに責任者と期限を設定します。実行後へ回せるかは、法定期限と業務への影響を踏まえて判断します。
課題管理表には、根拠資料、発見事項、影響額、対応担当、期限、完了を示す資料を記録します。「資料なし」と「問題なし」は区別します。
制度の確認先と関連ガイド
厚生労働省「労働者派遣事業関係業務取扱要領・第3」、厚生労働省「事業譲渡等指針」、個人情報保護委員会「通則編」を確認します。待遇決定方式については厚生労働省「派遣労働者の同一労働同一賃金」で適用日を確認してください。2026年10月1日施行の改正を扱う場合は、現行運用と施行後の対応を分けて準備します。
売却前に準備する資料と、株式譲渡・事業譲渡の基礎もあわせて確認できます。
現場の数字と帳票がそろう前でも相談できます。
匿名相談の段階から、どの資料を整えるべきか整理します。


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